美大生が就職活動で考えておくべきこと
交差点で信号待ちをしていると、斜め前のリクルートスーツを着た女性に目が止まる。
面接や、説明会をはしごしているのだろうか、信号を待ちながら、履歴書に写真を貼っている。
時間を惜しんで、履歴書を作る彼女の後ろ姿にここ数年の就職活動の厳しさを感じる。残暑が過ぎ、過ごしやすくなってきたが就職活動をする学生たちには、まだまだ厳しい季節が続きそうだ。
美大生にとっても例外ではない。もともと、美大生の就職率は一般の大学生の就職率を下回っている。一部の引く手数多のデザイン学系の学科を除いて、 厳しい活動であることが想像できる。
では、なぜ、美大生の就職率は下回っているのか。
その要因のひとつとして、選択している職種の幅が、狭いのではないかと思う。
美大という専門性の強い教育機関で学んでいるだけに、特定の職種に絞るのは当たり前ではあるが、 美大を出たからといって、是が非でも美術系の就職先でなくてはならないというわけではないはずだ。
美術系の職場でなければ、学んできたスキルが全て無駄になってしまうというわけではないだろう。 全く違うジャンルの職種であっても、携わっていく内に、知らず知らずのうちにどこかで、美術、デザインというものとつながってしまうということは、 往々にしてある。
美大出だからと視野を狭める必要はない。専攻が違うからと遠慮せず、堂々と会社の門をたたいてみるといい。
全く専攻と関係のない会社の説明会に、美大生が行ったとしよう。
周りが一般の文系、理系大学出身者が集まる中で、たった一人だけ、美大出身者が混ざっていれば、否が応にも注目が高まる。
「なんで、君ここに来ちゃったの?」と思わせた時点で狙いどおりと思ってよいのではないのか。 自分の売り込み内容も他の学生たちと一線を画す。
逆に美術、デザイン系の会社へ赴けば、この一般と美大の比率は逆転するのは当然ではある。
東北芸術工科大学、副学長であり、現代アーティストでもある宮島達男先生はツイッターにおいて、言及している。
おはよう!昨日、学生から「就職決まりました」とのうれしい報告。建築・環境の4年生。何でも地元の新聞社に。いいことだ。専門性が活かせる職種もいいけど、全然違う場でその専門性が活きる場面のほうが多い。むしろ、専門職にこだわりすぎると、結局、人生を棒に振る事も多いから。
— 宮島達男 (@tatsuomiyajima) 2011, 8月 27
今まで、大学で学んできたことを発揮することのできる職につけるにこしたことはない。 しかし、その考え方が選択肢を狭めていないだろうか。自分の可能性や学びの機会を逃してはいないだろうか。
自分の適職というのはわかりにくいもの。だからこそ、色々やってみてもよいのではないかと思う。 合っていないと思えば、また別の会社を探せばいいだけの話である。日本には山ほど会社というものが存在しているのだから。
自分にはどのような仕事が向いているのか。探し、迷い続けることが人生なのかもしれない。
頑張れ、就活生。