森の中の美術館、郡山美術館『吉田博展』
郡山美術館で『吉田博展』見てきました。吉田博?知らない画家さんでしたが、この展示をきっかけに信者になってしまいそうです。
こんな版画は見たことないと思わせた色味の豊かさや美しさ。日本の湿度、空気感をよく表している画家です。
郡山美術館は周りを森で囲まれたとても立派な美術館。展示を見に来なくてもゆったり散歩したり、併設のカフェで休憩するのもいいかもしれません。
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アクセス
郡山駅から車で東に10分ほど。美術館通りの1本道で、四方は森に囲まれた美術館です。
郡山市街から安達太良山までを一望できる風土記ケ丘にあり、郡山市街とは反対方向になるため周辺は静かで落ち着いた雰囲気。
郡山には何度も来たことはありますが、こんなに立派な美術館があるなんて、知りませんでした。
郡山美術館
東京都現代美術館や新国立劇場、東京オペラシティを手掛けた柳澤孝彦が設計を手掛け、コンクリートを敷き詰め、その目を生かすのが特徴のようです。
岩のモニュメントが敷き詰められ、その中に『野兎と鐘』というブロンズがあります。
巨大な前面ガラスで明かりを取り入れて、館内は自然の光が差し込みます。館内から外の石庭がよく見渡せ、館内と館外との境界をあいまいにする狙いがあります。
常設展はイギリス近代美術と日本近代美術、郡山にゆかりのある作家の作品が展示されています。
常設展のみで観覧する場合は一般200円。
生誕140年 吉田博展
展示作品は主に版画、油絵、水彩とスケッチ。
率直な感想としては油絵には惹かれませんでしたが、版画や水彩の影色の美しさにしびれました。湿度の高い日本だからこその空気感というものが画面から伝わってきます。
また描くものと描かないものを分ける引き算の技術が抜群です。
絵を描くということは見たものをすべてそのまま描くというわけではありません。視覚から入ってくる様々な情報の中から取捨選択して、描かないで省くことを行います。
上手い人はこの省く技術が長けていますが、スケッチを見ているとその技術がうかがえました。
私は吉田博を存じませんでしたが、ほか多くの人が知らなかったのではないでしょうか。
それもそのはずで、吉田博は国内の知名度よりも、海外で評価を得てきた画家で、故・ダイアナ妃がケンジントン宮殿の執務室に吉田博の版画を飾っていたことや、第二次世界大戦終戦直後、マッカーサー総司令官夫人、リッジウェイ司令官夫人が博の家を訪ねたという話もあるほど。
国内では同時期に活動していた黒田清輝が率いていた画壇の方が力があったようで、時代のそうした流れというのは後世の人の美術に対する知識や美的感覚に影響がありますよね。
吉田博の版画の特色として30回以上とも言われる多色刷りにあります。輪郭から影と何度となく擦り重ねていくことで美しいグラデーションを作っています。
この『生誕140年 吉田博展』にて版画のイメージが少し変わりました。良い展示を見て満腹です。
普段は静かな美術館。ですが郡山美術館に行った前週にテレビで吉田博が取り上げられたため、結構混雑していました。メディアの力恐るべし。
なおこの『吉田博展』は全国を巡回しています。日程は下記の通りです。
- [福岡展] 2017年2月4日~3月20日 久留米市美術館
- [長野展] 2017年4月29日~6月18日 上田市立美術館
- [東京展] 2017年7月8日~8月27日 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
東京展でまた見てもいいかなと思っています。
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